本研究では、渦中心を持つ速度場を使い、LIC法における関心領域の設定において、「時間」という指標を利用する手法が有効であることの確認を行った。LIC法では、各ピクセルを平等に扱うので、特徴をもつ速度場の可視化において、関心領域の設定方法に関する研究がさかんになっている。特に、関心領域として、特徴領域からの近さをいかに表現するかに興味が集まっている。 我々は「近さ」の指標として、重さゼロの粒子が注目画素に到着するまでの経過時間を取りあげた。各画素でこの経過時間を計算するために、与えられた速度場においてベクタの方向を逆転したものを考え、注目画素から重さゼロの粒子を初速度0で放した。この仮想粒子は、渦中心を含む格子の稜線または速度場の境界に到着する。後者の場合、その画素には、渦近傍でないことを示す負の値を記録する。前者の場合、稜線までの経過時間および稜線における到着点から渦中心までの経過時間の和を画素に記録する。ただし、特異点理論を用いて渦近傍における粒子の軌道を近似すると経過時間が無限大となってしまう。我々はこの問題を解決するために、粒子が渦中心に到達するまでの時間を有限なものとして取り扱うことを可能とする粒子の軌道近似法を提案した。 渦中心付近で速度場が等方性をもつ場合、「近さ」の指標として、距離、時間いずれを用いても結果画像は同じようなものとなる。時問を指標とするメリットは、渦中心付近で速度場が非等方性をもつ場合である。われわれは、台風のような渦中心付近で等方性でない分布となる速度場に対して、本手法を適用し、渦中心付近の速度分布をうまく表現する結果画像を得ることに成功した。 さらに、3次元ベクタ場も対象とできるよう可視化手法の拡張を行った。渦中心を含む3次元ベクタ場に対して、渦中心を内包する格子、すなわち、渦格子の界面から渦中心に至るまでの経過時間をゼロと仮定して生成したLIC画像について、経過時間を重要度とする3次元LIC手法の有効性について検証を行った。
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