研究概要 |
現在、遺伝子発現量の時系列データが得られるようになっており、複数の遺伝子間の機能予測、すなわち遺伝子間相互作用ネットワークの構造を推定することが現実的なものになっている。遺伝子発現量の時系列データからこれを再現する数理モデルを推定することができれば、この数理モデルを基にして遺伝子間の相互作用ネットワークを推定することができると考えられる。しかし実際に未知のネットワークを推定するにあたって、遺伝子間相互作用ネットワークについての知見は十分でなく、どのような形式の数理モデルによって近似するかが問題となる。本研究では、時系列データを用いてそれを再現するGMA(一般質量作用則)に基づいた非線形連立微分方程式を自動導出するプログラムを設計・開発し、その有用性を明らかにすることを目的とする。数理モデルの構造それ自身を最適化するために進化的計算の位一手法である遺伝的プログラミング(Genetic Programming, GP)を採用した。さらに、GPは求める数理モデルに含まれる係数の最適化に関しては進化戦略(Evolution Strategy, ES)アルゴリズムを採用した。開発したプログラムを用いて以下の数値実験を行った。なお、使用した計算機は(Alpha21264-667Mhz,SPECfp95:75.3,SPECint95:37.0)である。まず、テストケースとして実数定数を持つ2元連立微分方程式を計算して得られるデータをサンプリングポイントとして与え、数理モデルを推定できるかどうか実験した。次に、次元数を増やし、3元連立微分方程式の探索を同様の方法で行った。その結果、GPによる連立微分方程式の探索は、次元数が増加するにつれて、1つのタイムコースから1つの数理モデルを推定することは困難で、複数の解候補を与えるため、拘束条件として複数のセットのタイムコースを与えることが解を絞り込む上で重要であることが明らかになった。今後、開発したプログラムを、さらに次元数を増加させたり、カオスのような複雑系の時系列データに適用することで有用性を明らかにする予定である。
|