研究概要 |
本研究は大きく3つの研究ステップから構成される. 第1段階は,探索空間を可視化したインタラクティブ進化計算(視覚化IEC)の提案と有効性の評価である.基本的なIECでは,人間と進化計算(EC)の役割が評価と最適化に分化していたが,EC探索点の分布を2次元に写像することでEC探索空間の景観を視覚化しIECの性能を向上する手法を提案した.次に,4つの写像手法を計算量・収束の高速化等の観点から評価し,自己組織化写像を用いた視覚化IECが実用的な実現方法であることを示した. 第2段階は,視覚化技術の応用展開である.補聴器フィッティングの場所・時間の制約をなくすよう視覚化IECをPDAに移植し,このPDAを用いて補聴器IECフィッティングの実用性を評価した.第2の展開は,EC探索空間の景観情報を利用するEC高速化の提案で,EC探索空間を単峰性関数で近似して頂点座標を素質の良いエリート個体として組み込む手法の評価,多重ガウス関数で同様に近似し各ガウス関数を乱数生成関数として次の探索点を生成する手法の評価,などを評価した.第3の展開は,医療画像の疾患部分の診断をしやすくするような画像強調フィルタを視覚的に設計するIEC技術の応用である.画像処理経験のない医療画像診断の専門家を被験者として効果を示した. 第3段階は,心の状態の視覚化のためのIEC技術の可能性を探る研究である.IECベースのCGライティングデザイン支援技術を用いて統合失調者3名と健常者5名に「楽しい」「悲しい」ライティングデザインをしてもらい,健常者32名がこれらを一対比較法較した.この結果,被験者の統合失調者の「楽しい-悲しい」感情表現幅が健常者に比べて有意に狭いという結果が得られた.このようにIEC技術が心の状態の計測ツールになりえる可能性を示すことができ,今後の展開への期待が得られた.
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