研究概要 |
照明環境や観測の幾何学的条件に依存しない高精度で安定した物体の認識手法の開発とシステムの実現を目的とした.まず可視光域で3チャンネル以上のチャンネル数をもつカメラ系を製作した.このマルチチャンネル・ビジョンシステムを用いて,画像データから物体表面の反射特性を計測したり,反射特性を推定したりする手法を開発した.さらに照明光と物体表面の分光情報を推定するアルゴリズムを開発し,これを物体認識のために利用するとともに,画像生成にも利用できた. 平成13年度は,マルチチャンネルのカメラシステムの構築に力を注いだ.基本部を液晶チューナブルフィルタと本申請によるモノクロCCDカメラ,パソコンで製作した.構築したのは液晶フィルタを制御して分光画像を計測するシステムである.測定すべき輝度レベルは大きく異なり,しかも分光画像は暗いので,高い分解能の画像データが計測できるように工夫した.これよりカメラデータから物体表面の反射率や表面粗さを含むモデルのパラメータを推定する手法を検討した. 平成14年度は,マルチチャンネル画像データから照明光の分光分布と物体表面の分光反射率を推定するアルゴリズムを開発した.チャンネルは6から31チャンネルまでを想定し,目的に応じて適切なチャンネル数を有するカメラを実験に使用した.分光関数の記述には有限次元線形モデルを用いたが,推定処理の効率化のために線形モデルを用いない手法も開発した.次に,マルチチャンネル画像データからハイライトや陰影に依存しない領域分割のアルゴリズムを検討した.最後に,マルチチャンネル・ビジョンシステムを美術絵画のデジタルアーカイブへ適用することを試みた.
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