研究概要 |
本研究では,創造的活動の端緒をつかむのを支援するコンピュータ作業環境を,電子図書館に関連する技術を使って実現した。作業環境とは,電子図書館で取り囲まれ,層構造に配置された作業部分空間の総体で,各部分空間は作業に必要な複数のウィンドウから成る。作業者は環境の中で,日常的に,多様な作業を同時並行して行うことで,新しいアイデアを見出す。作業環境を作り上げるには,電子図書館の構築と作業空間の実現の2つが必要になる。 電子図書館の構築に関しては,文献ならびに,通常のOSに見られるような木構造で管理されたアプリケーションデータも統一的に扱える方法を開発した。多様な情報を扱うこの電子図書館は,創造的活動のための共通場を作り出す。電子図書館のブラウジングに際して,キーワードとパス名の利用だけでなく,データの管理形態にも配慮すると,効率的に必要情報を取り出せることが分かった。 作業空間としては,マルチディスプレイの利用で縦横方向に,部分空間を階層化することで奥行き方向に広がった,仮想3次元空間を実現した。創造的活動の支援のためには複数の部分空間に渡って分散して存在する多様な情報を同時に扱えなければならない。これには,環境に画像センサを設置して作業者の頭の動きを捉え,奥の階層にある部分空間を覗き込めるようにした。 作業環境の評価に関して,従来からある仮想ディスクトップ方式と比較して使用実験を行ったところ,より利便性の高い環境が実現できたことが分かった。しかしながら,それが創造的活動に直接繋がるかどうかの評価を行うまでには至らなかった。今後の課題として,この点を確認し,一般社会で利用されるようなロバストな環境を作り上げることがあげられる。
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