研究概要 |
感性増幅を意図したコンテンツ作製方法や視聴方法の開発に向け、映像の再生速度や音楽聴取時の振動触覚の種類や大きさなど物理要因と人の感性に与える影響の関係を定量化すべく研究を実施し、以下の結果が得られた。 (1)人が動画映像を見る場合、「気分」、「力」、「質」、「動き」の4つの捉え方している。さらに、因子分析により分類された印象語対が再生速度によりどのようなパターンで変化しているか検討した結果、「気分」を表す印象、「質」を表す印象は、Fast再生もしくはSlow再生のどちらか一方だけで変化している。すなわち、どちらか一方の速度変化で印象を強調できるとともに、片方の速度変化では印象を維持しているのである。一方、「力」を表す印象、「動き」を表す印象は、Fast再生とSlow再生で逆の印象を強調している。その結果、各因子は再生速度の変化に対して固有のパターンで変化していると言える。 (2)音楽聴取時に音源に対応した振動を聴取者の身体に付与した場合、付与する振動の種類や振動の強さ、振動を付与する身体の箇所を選ぶことにより音楽の印象を強調できる見通しが得られた。さらに、「迫力が出た,乗りがよくなった,臨場感が出た,快くなった」などの印象変化が振動付与の有効性の要因となることがわかった.これらの有効な印象増幅はリズミカルな楽曲と静かで穏やかな楽曲の両方で得られる。また,このような楽曲において,風船による振動付与は振動楽器を選択しなくてもほとんどの楽曲で有効な印象増幅が得られることが明らかになった.このことは,楽器を選択した振動付与の困難なCDなど既存の音源ソースに対して風船による振動付与が有効であることを意味している. (3)スピーカー音源を聴取者の遠方に設置する従来のスタイルではなく、音源を限りなく聴取者に近づけること、及び音楽による空気振動を体前面に付与する体感音楽聴取法の検討を行った。その結果、本聴取法がCDプレーヤーによるステレオ再生よりも好まれること、また「乗り」や「迫力」をはじめとした印象を強調させ、「快さ」や「癒し」にもつながる効果があることが分かった。 以上、動画映像の再生方法や振動付与を伴う音楽が印象に及ぼす影響を定量的に把握できた。今後は、より魅力的な視聴覚に結びつく工学的な設計へと研究を展開する。
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