研究概要 |
交付申請書で記載した「研究目的・研究実施計画」に基づいて,まず,申請書提出時の目標を示す.2年間の研究期間内の目標は以下の通りである. (1)インターネット上の1000台以上のパソコン,ワークステーションを利用するHTC環境上で動作する汎用並列分枝限定法を実装したシステムの試作(設計上は,汎用メタヒューリスティック・ソルバーを並列に動作可能な構造とする). (2)汎用最適化問題ソルバーをHTC環境上に構築するときの問題点の把握 (3)最適化問題ソルバーの汎用化限界の把握 本研究期間において,PUBB2(Parallelization Utility for Branch-and-Bound algorithms ver.2)を開発した.PUBB2の開発を通して,上記(1)(2)に関しては,実際に1000台以上のHTC環境での実行を行えなかった点を除いて達成された.PUBB2では実行環境のレイヤーは,オーバーライドすべきわずかな関数の実装を通して実現できる.また,並列・分散のアルゴリズムは,PUBB2におけるProblemManagerクラスを継承したクラスを開発することで,自由な実装が行える.GRIDに対応した実装部分のコードは未開発ではあるが,より汎用的な,フレームワークそのものの構築を支援するソフトウェアツールを試作した. 上記目標の(3)に関しては,混合整数計画問題のための商用ソルバーであるILOG社CPLEX MIP OptimizerをPUBB2フレームワークによって並列化することを試みた.CPLEX MIP Optimizerは,混合整数計画問題に対するソルバーとしては,世界最高水準のものである.理論的に新しい研究成果が反映されているだけではなく,メモリ管理などの実装面でも洗練されたプログラムである.そのため,GRIDなどを対象とした並列システムでさえ,性能面ではCPLEX単体に通常は追いつかない.開発するべき汎用システムには,最新の成果を並列化できることが求められる.そこで,汎用のフレームワークで,単体として高性能な商用のソルバーをどの程度効果的に高速化が可能であるのかをシステムの評価の一つとして行った. 本研究課題の主たる成果は,試作システムを開発したことである.よって,最終報告書には,開発したプログラム・ソースコードから自動生成したリファレンス・マニュアルを添付した.研究期間は,開発に費やされたため,対外発表として,既に掲載されている査読付き論文はないが,論文としては,掲載予定1編と投稿中論文1編の2本の論文に成果をまとめた.
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