研究概要 |
研究課題名にある「定跡」とは将棋で用いられる言葉であるが,本研究は,スケジューリングの作業が将棋を指すことと似ている部分があると考えたことが出発点となっている.ジョブショップのメイクスパン最小化とは,すべてのジョブの処理に要する時間が最小となるスケジュールを求めることを目的としている.時間軸に沿って早い時刻から徐々にオペレーションを割り付けていく場合,序盤から中盤にかけては,割付可能なオペレーションそれぞれに対し,将来への影響を解析的に精度良く先読みすることが難しい.本研究はこの難しさを,定跡,すなわち人間スケジューラの判断も加味させることによって緩和させる試みを行った.これは,人間スケジューラが,与えられたスケジュールにおけるジョブの流れや各機械の負荷状態と遊休状態を総合的に判断して,適切なスケジュール修正を行う場合があることを背景としている. まず,対話型スケジューリングシステムを用いて人間スケジューラのスケジュール変更パターンを抽出する実験を行った.その結果,ネックとなる機械での遊休状態,クリティカルパス上のオペレーション,各ジョブの処理の流れや停滞状況などに特に着目していることが明らかとなった.これらを手続き化してアクティブスケジュールの生成手続きと結び付ける方法を提案し,比較的良好なスケジュールが得られることを数値計算実験より確認した. また,割付可能なオペレーションの中から1つを定跡によって選ぶことが難しい場合のあることより,ラグランジュ緩和法の援用を検討し,下界値を使う従来法よりも好ましい場合の多いことを確認した.また,最適解の探索に分枝限定法を用いる際,探索履歴の参照によって一部の探索を省略させる技法が,計算負荷の増加を埋め合わせるだけの効率的な探索を実現する場合のあることを実験的に明らかにした.
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