研究概要 |
本研究は,今日における耐久消費財の特徴に着目する.1つ目は,消費者の製品寿命概念が物理的寿命の概念から,買替え寿命に変化していることである.2つ目は,耐久消費財の売上中で買替えによる売上の占める割合が大きくなることである.2つ目の特徴は1つ目の特徴によりもっと加速化されつつある.そこで,各企業は顧客維持戦略が重要となる.企業の顧客維持戦略の一環としてブランドロイヤルティを向上させ,ブランド・スイッチングを防ぎ,反復購買に至るようにする戦略が必要となる. 平成13年度の研究では,耐久消費財に対する消費者行動モデルに基づいた上で維持戦略分析に使えるように拡張した.消費者はいつ買替えをするのか,なぜ買替えをするのか,そしてどのメーカーのどのブランドにスイッチングするのかという疑問に答えるモデルであり,維持戦略につながるように解析や考察を加える. 平成14年度の研究では,耐久消費財に対する競争市場構造モデルを構築した.企業にとって市場はどこか,競争相手は誰か,消費者がスイッチングするとき属性の優先順位はどうなっているかに答えるモデルである. 個人レベルでの買替え行動モデルである平成13年度の研究では,日本の携帯電話市場のデータを用いて実証分析を行った.また,市場レベルでの買替え行動モデルである平成14年度の研究では,米国の自動車データを用いて実証分析を行った.さらに,平成14年度のモデルにスイッチングパターン分析を追加して研究の有用性を高めた.その実証分析は日本の携帯電話市場のデータを用いることにより平成13年度の研究との一貫性を持たせた. 本研究は,耐久消費財における学問的な有効性(ダイナミックス考慮,非対称性考慮など)だけではなく,実務的な有用性(データ収集の容易性,維持戦略樹立にすぐ使えるなど)があることが研究の成果として挙げられる.
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