研究概要 |
1.研究目的: 次の南海地震の発生確率は,30年以内に40%,50年以内に80%,地震規模M8.4-8.5といわれ,東南海・南海道沿岸一帯の大津波による被害が懸念されている. 本研究は,四国沿岸域集落の津波被害,特に避難行動に着目して人的被害を最小にする方法を示し,併せて四国全域の津波危険度を評価しようとするものである. 2.研究成果: (1)本研究での対象地震は,安政南海地震M8.4を用い,紀伊水道・豊後水道に進入する津波の特性を詳細に考察した後,瀬戸内海沿岸全域の津波の特性を考察し,津波の到達時間,津波高,流速等を求め,四国沿岸全域にわたる津波のアニメーションを完成させ,住民が視覚的に津波の挙動を理解でき,地域の津波危険度を実感できるようにした.(2)高知県土佐市宇佐地区を対象に,住民の避難行動をも考慮して津波による犠牲者数の定量的評価法の精度向上ができた.(3)宇佐において水門,陸閘の閉鎖による浸水減少効果を明らかにし,さらに,門扉閉鎖による人的被害者減少効果を定量的に評価する手法を提示しえた.(4)徳島県海部郡浅川地区を対象に,集落の家屋の築年数から,地震による家屋倒壊の危険度も考慮に入れ,津波来襲時の避難経路の変更をも考慮した津波挙動の解析を行い,既存の避難場所配置の妥当性や避難方法を検討し,住民の自主防災に資する具体的資料を提供できるレベルまで進めた. 以上のように研究計画を着実に進め,所定の目的を達したが,新たな問題も起きている.すなわち,本研究でも紀伊水道沿岸-徳島沿岸-高知沿岸-豊後水道の沿岸域で既往の津波高を再現すべく数値シミュレーション結果を補正すれば,豊後水道の奥部での津波高を過小に見積もり,データが極端に少ない瀬戸内海の津波高も過小に見積もることになるなど,断層モデルそのものの再評価も必要なことを問題提起しえた.
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