研究概要 |
わが国周辺海域任意地点における波候とその長期変化を高精度で推定しうる実用的波浪推算システムを確立するため,NCEP表面風解析値資料と1点浅海波浪推算モデルを組み合わせた「51年浅海波浪推算システム」を構築するとともに,わが国沿岸の波浪観測地点で波浪推算を実施し,本システムの適用性を検討したのち,51年間の長期波浪推算結果に基づいて波高の長期変化特性を推定した.得られた結果の概要はつぎのようである. 1.波浪推算結果と観測結果の比較によれば,NCEP風を入力条件とした本システムは,波候,波高の傾向変動の再現において高い精度をもつといえる. 2.外洋ブイ地点での観測風とNCEP風資料の比較から,NCEP風資料が高風速時に観測風速を過小評価する傾向を有することが明らかになった.したがって同風資料を用いる本システムは,異常波浪時の波高を過小に見積もる傾向を有する.こうした異常波浪時のうち台風時については,NCEP風資料に台風モデル風を組み込むことにより,波候の推定精度を変えることなく推算精度を向上させることができた. 3.本システムはNCEP風資料の空間解像度がECMWF風資料より劣るので,波候の推定精度においてECMWF風を入力値とした波浪推算結果(ECMWF波資料)より劣るものの,風資料の等質性で優るので,波高の傾向変動においてECMWF波資料より高い精度を有する. 4.NCEP風資料の精度に問題があると考えられる最初の10年間を除いた年平均波高に対する傾向変動解析によれば,わが国沿岸における波高は統計的に有意な傾向変動をもたないといえる. 5.韓国沿岸におけるブイ地点で波浪推算結と観測結果の両者から推定した波候の比較から,本システムは韓国沿岸においても適用可能であることが確認された.また,韓国沿岸においてもわが国沿岸と同様に,統計的に有意な波高の長期的な増加傾向は認められなかった.
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