研究概要 |
本研究では,地下構造を表す垂要なパラメータの一つであるS波速度構造を簡単に求めることができる微動探査法の一つとして近年発表された,拡張Henstridge法(仮称)の大アレイ(半径600m程度まで)への適用性と実用性を検討している.拡張Henstridge法とは,円周上の最低3点に配置した地震計のアレイによって微動観測をすることにより,その地点での表面波位相速度の分散曲線を求める微動探査法であり,円の中心点に地震計を置く必要がないことと,円周上の不等間隔配置が許容されることを大きな特徴とする.アレイ半径5m,15mではその適用性が示されているが,より半径が大きなアレイへの適用例はこれまでなかった.本論文では3点から成る大アレイヘの拡張Henstridge法の適用性と実用性を検討するため,地下構造が既知の場所に半径25mから600mまでの等間隔・不等間隔の3点円形アレイを展開し,微動探査を実施した.まず最初に、円周上に正三角形に近い形で配置した3点に円の中心点を加えた4点アレイで微動観測を行ない,得られたデータにSPAC法を適用することで,観測地点直下の分散曲線を推定している.さらに、等間隔・不等間隔の3点アレイを利用して拡張Henstridge法により分散曲線を推定し,SPAC法により推定した分散曲線と比較して解析結果の妥当性を検討している.拡張Henstridge法の解析結果が,SPAC法とほぼ同程度の精度を持つことや,妥当に分散曲線が求まる波長範囲がSPAC法よりも長波長側にずれる傾向があることを明らかにしている.また,不等間隔配置した場合,観測誤差などによって分散曲線の推定精度が影響を受けるが,観測点の偏り度合がどの程度であれば妥当な解析結果が高い割合で求まるか,またその場合に分散曲線の妥当に求まる波長範囲がどのようであるかを実証的に検討している.
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