研究概要 |
2.45GHzマイクロ波による電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオン源内で単体Si及びFe等の固体材料を用いて多価イオン生成を行い,環境に対して低負荷かつ適合性の良い半導体構成材料プロセス実現を目指した.スバッタリング法によってSiまたはFe原子を導入し,Siで4価,Feで6価までの多価イオンビーム生成した.イオン引き出し電圧は10kVである.より高価数Feイオンを生成するためにFe蒸発源を使用し,8価までのFe多価イオン生成に成功した.スバッタリング法と蒸発法を比べたところ,4価以上の価数のFe多価イオン電流で後者の方法に基づく方法で得られた値が前者より一桁以上高収量であった.これら一連の実験で得られた全Fe多価イオン電流の全引き出し電流値に対する割合は約10%程度に及んだ. 本実験装置ビームライン終端にビーム照射用真空容器を構築し,その中に温度制御可能な照射用のハース及びSi(100)の基板を設置した.イオンビームは収束・偏向等のビーム制御し,ビーム形状をワイヤープローブで測定した.そして多価イオンビームを用いて環境低負荷・適合性半導体材料のベータ鉄シリサイド(β-FeSi_2)の合成実験を行った.照射条件はAr多価イオンビームでSi基板温度を300℃にしてプリスパッタした後,2〜5価Fe多価イオンを同一加速電圧(10kV)で高ドーズ量(10^<16-17>ion/cm^2)注入である.照射終了後,約800℃でポストアニールを行った.照射試料は薄膜用X線回折等で評価を行い,β-FeSi2生成を確認し,オージェ電子測定によって得られた深さ方向のFeの分布は理論的な予測にほぼ一致した.更に,Ti0_2薄膜へイオン注入し,低ドーズ注入によって蒸留水液滴に対する接触角の光触媒性において,紫外領域光における劣化を生じることなく,可視光領域で光触媒性を増大させることにも成功した.
|