研究概要 |
21世紀におけるエネルギー危機を救う方法の一つとして,無尽蔵でクリーンな宇宙太陽発電所(Space Power Station/Satellite ; SPS)が注目されている。このSPSにおいて,マイクロ波電力伝送は重要な基盤技術である。SPSでは送電目標(受電点)に正確にマイクロ波ビームを向ける方法としてレトロディレクティブ方式が提案されており,これをソフトウエア的に実現する研究を行っている。レトロディレクティブ方式は受電点より位置を知らせるパイロット信号を送信し,複数のアンテナ間の位相差情報を用いてマイクロ波ビームを電気的に目標に向ける方式である。これにスペクトル拡散の技術を応用し,雑音に強く,妨害波と識別が可能で複数方向からのパイロット信号にも対応できる目標方向推定方法と関連技術に関する研究を行っている。 本報告では,スペクトル拡散方式の特性を応用して,マイクロ波電力の送電下で,パイロット信号の周波数を送電周波数と同一にする研究を中心に述べる。これはサーキュレータ,帯域除去フィルタの利用や同期方法の改善により,送受アンテナの共用や周波数の有効利用に貢献できる成果である。パイロット信号にスペクトル拡散変調を用いた方式は,2.45GHzのシステムを製作した他,研究高度化設備費(COE分)として導入された「5.8ギガ宇宙太陽発電無線電力伝送システムSPORTS」のビーム形成制御サブシステムに実現されている。送電アレイアンテナは,5.8GHzの半導体送電器や144素子のビーム形成用円偏波アンテナなど構成されている。二つのパイロット信号送信機を備え,識別が行える。またこれを用いて,複数方向へ電力を送る設計をするための解析と実験も行った。均一振幅アレーを仮定し,遺伝的アルゴリズムを用いて,1方向送電における最適化と2方向送電を可能にするマルチビーム形成の最適化を行った。
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