研究概要 |
近年、中高エネルギー領域の荷電粒子に関わる原子核反応のデータは、イオンビーム応用、がん治療、宇宙放射線影響、放射光科学、中性子科学、核燃料廃棄物処理、新型原子力システム、基礎物理科学など極めて広く利用されるようになり、大型プロジェクトが多様に進められているが、これらを効率的に、安全に推進するためには、核データのデータベース化が不可欠である。従来の原子力発電のみを念頭に置いた核反応データと異なり、エネルギー領域においても、標的核種についても、多岐にわたり、実験のみから与えることは困難であり、理論とシミュレーションを考慮した作業が必要となる。現在、核データとして、まず重要な核子の弾性・非弾性散乱や(p,n),(n,p)など、1個の核子が関わる反応の評価は研究が進みつつあるが、次に重要となる1粒子が移行する(p,d),(n,d)反応やその逆反応に関する研究はほとんどなされていない。 本研究では、このような重陽子が介在する核データに関する実験的・理論的研究を行った。実験は、筑波大学と九州大学のタンデム加速器からの偏極陽子を使用し中重核を標的として断面積を測定し、直接反応モデルによりグローバルな解析を行って、連続スペクトルが支配的な励起エネルギー領域のスペクトルの解析法を開発することに成功した。この様な解析は、世界で初めての試みである。同時に、データが少ないため測定が必要とされる(n,d)反応について、九州大学の中性子源による測定を可能にするための多くの技術開発研究を行い、その根幹となる中性子の位置検出に関する新しい方法を編み出し、実験によってその原理を確かめることが出来、新たな研究の展開に向けた準備が整った。これらの成果は、以下に示すように、学会などにおいて、報告・公表を行っている。
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