研究概要 |
宇宙線生成核種、^7Be(半減期53.3d),^<32>P(同14.26d),^<33>P(同25.3d),^<35>S(同87.5d)は大気中で、宇宙線と空気粒子とが衝突することにより、ほぼ一定量生成され続けており、直ちに空気中のエアロゾル(主成分は細かい土壌粒子や海塩、工場排煙物質など)や硫黄化合物(工場排煙物質や海水から発生する亜硫酸ガスや硫酸塩粒子など)に結合する。したがってエアロゾルや硫黄化合物中の宇宙線生成核種を解析することにより、それらの大気中における履歴、滞留時間や起源などが明らかになる。一方地表からは放射性の気体(^<222>Rnや^<220>Rn)が放出されており、それらの壊変生成物である^<210>Pb(半減期22y),^<210>Po(同138d),^<212>Pb(同10h)も宇宙線生成核種の類似核種として使用できる。 大気中の亜硫酸ガス、エアロゾル、降雨、乾式降下物を10日毎に採取し、それらの試料中の硫黄量および上記の放射性核種を1年間測定した。それらを大気2ボックスモデルから解析し、各月ごとのエアロゾルおよび亜硫酸ガスおよび硫酸粒子の上空での移動量、地表への降下量を求めた。 一方半減時の短い^<212>Pbを利用して用種々の地表面へのエアロゾルの降下(乾式)を直接測定した。半減期が短いので3日ぐらい雨で降下した記録が消え、後は乾式で降下したエアロゾルのみ測定できる。この手法をもちいて、水面、草原、森林、舗装面など種々の地表面への乾式降下量を測定した。その結果は予測されるように起伏の多い地表面ほど乾式降下が多いことが分かった。 さらに森林系生態におけるエアロゾルの挙動を解明するため、杉林において一年間林内雨、樹幹流、および林外雨を10日毎に採取し、放射性核種を測定した。その結果、^7Beの平均滞留時間は60日程度と短く、^<210>Pbは510日と大変長いことがわかった。
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