|
春季、中国北部の砂漠地帯から巻き上げられた黄砂は、東アジア地域における大気エーロゾルの主要構成要素であり、気象への影響や砂漠化の問題として近年注目されている。
本研究では、衛星データと黄砂の長距離輸送順・逆シミュレーションを併用することにより、黄砂エーロゾルの広域の時・空間分布とその特性(サイズ分布、屈折率、光学的厚さ)を抽出するアルゴリズムを検討した。
(1)2002年3月17日に東北北部、北海道南部に強い黄砂現象が観測された事例について、その黄砂の発生源及び発生量を推定する方法が提案された。黄砂発生源及び発生量の推定には、長距離輸送順・逆シミュレーションが有効であること、また、各地点で継続的に観測されている大気浮遊粒子状物質量やライダー観測結果、MODIS等の衛星画像を併用することが重要であることが示された。
(2)衛星データから陸域上に薄く分布する黄砂エアロゾルの可視・近赤外波長帯における光学的特性を推定するためには、地表からの反射輝度を無視することができない。この研究では、陸域上の黄砂エアロゾルの光学的パラメータの値をADEOS/POLDERによる輝度と偏光データから地表反射率と同時に推定する方法が提案された。
6Sで使われている大気モデル、および、JungeのPower-lawに従うサイズ分布を採用し、443nm、670nmの波長帯それぞれについて推定した。その結果、各波長帯から推定された黄砂の屈折率、サイズ分布はかなり近い値が堆定されることが分かった。
(3)地上からの大気偏光観測が黄砂飛来時期に継続的に観測されてきた。その結果、黄砂飛来時とそうでない時に計測された偏光度の波長依存性に違いがあることが分かった。この結果は、濃度の薄い黄砂が大気中に存在するか否かを判別するために応用できる。
|
