研究課題/領域番号 |
13680624
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
環境影響評価(含放射線生物学)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤川 陽子 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (90178145)
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研究分担者 |
福井 正美 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (40027462)
静間 清 広島大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10127657)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2002年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2001年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 広島原爆 / 黒い雨 / ウラン235 / 放射性フォールアウト |
研究概要 |
1)ウラン同位体比測定の分析精度の検討 本申請における著者らの研究により、広島原爆の「黒い雨」に、U-235が含まれていたことが明らかになっている。広島に投下された原爆Little Boyに搭載されていたウラン235のうち、50kg程度は、核分裂を経ずに環境中に飛散したと考えられる。しかしながら、広島において採取された環境試料中に、過剰のウラン235を検出したという報告は、上記の著者らのものが初であって、Little Boy由来のウランの環境中での追跡が意外に困難であることを示唆している。例えば、黒い雨の痕跡のあるしっくいの分析値は、U-235/U-238(原子数比)は、最も高いもので0.00779(天然比0.00725-0.00726)であった。一方、著者らは以前の研究から広島原爆のフォールアウトを含むことが証明ずみの広島の土等を分析したが、過剰のウラン235は必ずしも検出されなかった。 上記の結果から、Little Boy由来のウラン235の環境中での挙動を明らかにしようとするならば、ウラン同位体比の微少な偏差を、精度よく検出することが必要と考え、微量の濃縮ウランを含む土壌14種を用いて米国ローレンスリバモア研と分析結果の相互比較を実施した。その結果、U-235/U-238比について、両研究機関の測定結果は相対誤差0.2%以内で一致し、高精度な分析が可能なことがわかった。 2)日渉園における調査 江戸時代に薬草園であった「日渉園」(広島市西区三滝)内の池跡の数地点において、堆積物試料を採取し、ウラン235および金属元素分析に供した。同園においては、原爆投下当時に黒い雨が降ったことが口伝により知られている。 「日渉園」の池跡にて採取した長さ20cm程度の柱状堆積物試料は、深さ方向に約1cm刻みに分割し、Ge半導体検出器によるCs-137分析、金属元素分析およびU-235/U-238同位体存在比分析に供した。ウラン235同位体存在比は、フォールアウト由来のCs-137の多い1960年代より以前の層においてわずかに高く、広島原爆の黒い雨に含まれていたU-235の影響が考えられた。今後、U-236等のU-235に比べて自然界におけるバックグランドが低い核種を指標として用いることで、黒い雨の雨域についてさらに確度の高い情報をえられる可能性があり、引き続く検討が重要と考えられた。
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