研究概要 |
本研究は水中の有機塩素化合物を紫外線によって分解する際に,予め溶存酸素を除去しておくと,分解効率が飛躍的に向上するという我々の発見を,排水処理へ応用することを目指した基礎研究である。二年間の研究によって以下のことが明らかになった。 1.化学物質による違い;脂肪族炭化水素の塩素化物の紫外線分解は除酸素によって著しく向上する。この除酸素効果は,その構造に,二重結合を持つものよりも単結合から成るものについてより顕著であった。芳香族化合物の塩素化物の脱塩素反応に対しても除酸素効果は認められたが脂肪族化合物ほどには飛躍的ではなかった。 2.紫外線の波長による違い;254nm単独および254nm+185nmの混合した光について検討したところ,185nmの光が分解に非常に有効であることがわかった。また,除酸素なしで,254nm+185nmの光を照射すると溶存酸素が減少し,2ppm程度にまで酸素濃度が減少した時点から有機塩素化合物の分解が促進されることがわかった。 3.除酸素効果のしくみ以上の知見から,185nmの光は直接結合を開裂させるが,酸素があると,この酸素によって光のエネルギーが吸収されるために効率が低下する。除酸素によって185nmの光が有効に作用するようになり,分解が促進されると推測される。 以上の結果より,この無酸素光分解法は排水中の有害有機物の分解jに有効であることが期待できる。懸濁物や高濃度の有機物質がある場合,目的成分の分解効率が低下したが,このような排水についても使えるための装置の改良が必要であり,現在,検討中である。
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