研究概要 |
最近のわが国では,地球温暖化,酸性雨,オゾン層の破壊を始めとする地球環境問題の深刻化,さらには石油や石炭などの化石燃料の枯渇に対する懸念から,社会全体で省資源・省エネルギーや資源リサイクルを進め,環境負荷の小さい資源循環型社会を実現していく機運が高まっている。資源循環型社会の形成に向けては,国や地域における省資源・省エネルギーの進展状況を把握することが必要であるが,その際には国全体あるいは地域全体で財貨及びサービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効である。 本研究では,「昭和45-50-55年接続産業連関表」及び「昭和55-60-平成2年接続産業連関表」から作成した1970年,75年,80年,85年,90年の全国8地域別の地域内産業連関表を用いて,これまで十分な研究が行われてこなかった全国地域別の産業構造変化と省資源・省エネルギー動向の関連を分析した。 資源・エネルギー誘発係数を用いた実証分析の結果より,地域による差異はあるものの,分析対象期間を通じて,全国,各地域ともに,省資源・省エネルギー化が進展したことが明らかになった。また,資源・エネルギー消費構造要因の分析結果から,省資源・省エネルギー化の過程では,技術構造変化の貢献が大きいことが示された。しかし一方で,最終需要面での省資源・省エネルギー化は,各地域ともに顕著な進展が見られなかった。従って,今後の環境政策では,ライフスタイルの改善を始めとする最終需要面の対応が必要と考えられる。
|