研究概要 |
自然の海浜あるいは海岸堤防前面の砂浜に自生している海浜植物は,砂浜上を吹く強風による飛砂のの防止,四季折々の芽,葉,花で海浜を飾り海浜景観の維持,および真夏日における砂面の温度上昇の防止,などに役立っている.さらに,地価茎および根が砂面下1m程まで進入し,波の作用点に対し海浜砂を確保している.そのため植生が繁茂している箇所では,台風および冬季の高波浪などの時化による波の砂浜浸食に対して,植生の根網による浜崖が形成されるなど,それなりの効果を発揮した形跡がしばしば見受けられる.このような海浜植物の持つ特色を利用・応用して,海水浴場の砂浜は,冬になると冬季の季節風(海から陸方向に吹く)によって砂が背後地の住宅,公園,道路などへ砂が吹き込む飛砂防止,海岸浸食の防止,海岸堤防と汀線まで間の砂浜を憩い,潤い,安らぎの空間として利用する.そのための方法として,ヒメシバを敷き詰めた海浜公園,あるいはハマヒルガオ,コウボウムギなどによる海浜花壇,などに海浜の植生を利用・活用する方法が考えられる. このような方法を考えるに当たって必要な基礎的な資料を得るために,富士川河口周辺の富士海岸,天竜川河口周辺の遠州海岸,熊野川河口周辺の7里御浜海岸,さらに愛知県の渥美半島太平洋側赤羽根海岸および知多半島内海海岸を研究対象にして,どのような海浜植物種が,どの場所に,どのように生育繁茂しているかを詳しく現地海岸で調査する.さらに,海浜の植生の生育および繁殖と深く関係する次の要因も同時に調査する. 上述の(1)〜(6)の研究については,各学会の国際会議,研究報告,口頭で学会発表している.しかし,(7)については,現在進行中で成果が得られ次第公表する予定である. 得られた主な研究成果は,つぎのようにまとめられる. (1)3海岸は,いずれも大河川の河口に広がる砂・砂利浜の海岸で,海岸堤防から汀線までの幅が海岸方向に変化している.これらの海浜について,海岸堤防から植生帯先端までの幅と,植生種の種類および海岸堤防から汀線まで距離には,一定の関係が存在する. (2)静岡県の富士海岸と遠州海岸,および三重県の7里御浜海岸で多く生育が見られる植生種は,それぞれハマヒルガオ,メヒシバ,ハマゴウ;ハマヒルガオ,コウボウムギ,ケカモノハシ;ハマゴウ,ハマヒルガオ,ノイバラである. (3)静岡県の富士海岸と遠州海岸,および三重県の7里御海岸の3海岸に共通して多く生育が見られる植生種は,コウボウムギ,ハマヒルガオ,およびメヒシバである. (4)海浜植生が生育可能な平均海水面からの地盤高は,波の遡上高さ,入射波の波形勾配および汀線付近の浜勾配の関係で規定できる. (5)3海岸に共通して,海浜植生が生育可能な平均海水面からの地盤高を相対的な波の遡上高さと汀線勾配との関係で表示した.
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