研究概要 |
多環芳香族炭化水素(PAHs)の環境中における動態を評価した.そのため,降水と乾性降下物,土壌,底質・上層水・生物に関する調査を実施した.降水と乾性降下物に関する詳細調査は1年半にわたり富山県中央部の都市近郊地域で実施した.降水は各月1〜4回採取し,PAHsの濃度,組成,懸濁態と溶存態への分配,降下負荷量について,また,降水の変異原性について解析した.乾性降下物は1〜2ヶ月に1回の頻度で採取し,乾性降下物によるPAHsの降下負荷量と組成について解析した.土壌に関する調査は3つの地域,すなわち,富山県新湊市,富山県上新川郡大沢野町,さらに,富山県と石川県の県境に位置する医王山系において実施した.土壌中のPAHs含量と組成が,市街地や幹線道路からの距離,有機物量などの要因に対応して,どのような分布特性を示すか解析した.底質,上層水,生物に関する調査は富山県中央部を流下する下条川とその源流域である射水丘陵に分布する貯水池,溜池で実施した底質および上層水,生物に含まれるPAHsの分布特性を解析した.水環境におけるPAHsの分布についてまとめると,降水の懸濁態ではPAHs含量は10^4ng/g,溶存態では10^<-2〜-1>ng/g,乾性降下物では10^<4〜5>ng/gの範囲を示した.土壌と底質では10^<2〜3>ng/gオーダーであった.貯水池・溜池上層水の懸濁態のPAHs含量は10^<3〜4>ng/g,植物プランクトンでは10^<3〜4>ng/gのオーダー,溶存態PAHsは10^<-3〜-2>ng/gであった.
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