研究概要 |
グルタミン酸トランスポーターは神経終末やグリア細胞に存在し、シナプス間隙のグルタミン酸濃度を常に低濃度に維持する役割を担っている。我々はアフィニティカラムやトランスポーターの可視化実験に利用できる機能性リガンド創成を目的として研究を行った。その結果、高親和性ブロッカーとして(X-BzA-TBOAs)を見出し、その生物活性を詳細に検討することができた。中でも(2S,3S)-3-{3-[4-(trifluoromethyl)benzoylamino]-benzyloxy}aspartate(TFB-TBOA)が最も強いラベル化グルタミン酸取り込み阻害能を示した。COS-1細胞に一過性発現させたEAAT1,EAAT2,EAAT3に対するTFB-TBOAの取り込み阻害のIC_<50>値は、各々22nM,17nM,300nMであり、L-TBOA(33μM,6.2μM,15μM)に比べて、大きく親和性が向上している。アフリカツメガエル卵母細胞に発現させた各サブタイプでの電気生理学的解析により、TFB-TBOAは全てのサブタイプに対してブロッカーとして働くことがわかったが、他のサブタイプに比べてEAAT3に対する阻害は比較的弱かった。タンパクとの強い結合を反映してか、EAAT1に対するTFB-TBOAの阻害効果は30分以上も持続した。グルタミン酸受容体を始めとする各種受容体への作用も検討したが、他に顕著な活性を示す系はなく、TFB-TBOAはEAATに非常に選択的であることが確認できた。特にTBOAで見られた弱いNMDA受容体結合活性が消失したことは、複雑な生物標本での解析を明快にするものである。そこで、TFB-TBOAをマウスに脳内投与したところ、グルタミン酸の蓄積によるものと考えられる強い痙攣を誘発した。TFB-TBOAのみならずX-BzA-TBOA類はいずれも同様の強い活性をもつことから、現在、光親和性ラベル化や放射性ラベル化に向けた取り組みを行っている。
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