研究概要 |
核内レセプターを介する新規細胞内シグナリング機構を明らかにするため、当該期間において、核内レセプターFXRおよびPPARの標的遺伝子の同定とその機能解析およびその遺伝子発現制御の解析をし、以下の研究成果を得た。 1.核内レセプターFXRの標的遺伝子、胆汁酸トランスポーターI-BABPの遺伝子発現が、転写因子SREBP (sterol regulatory element-binding Protein)-1cおよび核内レセプターLXR (liver X receptor)によって制御されていることを明らかにした。クラスの異なる転写因子が協調的に働くことによって、コレステロールのホメオスタシス維持に寄与していることを、in vivoおよびin vitroで明らかにした(J. Biol. Chem., 1277, 1324-1331, 2002)。 2.核内レセプターFXRの標的遺伝子を探索する過程で、ヒトLDLレセプターが、胆汁酸で転写活性化されることを見出したが、胆汁酸によるLDLレセプター遺伝子の転写活性化は、FXRを介する経路ではなく、MAPキナーゼを介する経路であることが明らかにした。(J. Biol. Chem., 277, 37229-37234, 2002)。 3.核内レセプターFXRの標的遺伝子を探索する過程で、RANTES (hepatic regulated upon activation, normal T-cell expressed and secreted)遺伝子が胆汁酸で転写活性化されることを明らかにした。また、胆汁酸によるRANTES遺伝子の活性化は、核内レセプターPPARのリガンドであるフィブレートの投与で解除されることから、この抑制には、核内レセプターPPARαが関与している可能性が示唆された。(Eur. J. Pharmacol. 448, 19-26, 2002)。 4.核内レセプターPPARの標的遺伝子、上皮性脂肪酸結合タンパク質(C/E-FABP)が、ヒト前立腺癌及び乳癌で高発現し、癌の転移能獲得に関与していることを明らかにした。更に、C/E-FABPの高発現が、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の遺伝子発現を亢進させることを明らかにした。(Cancer Res. 61, 4357-4364, 2001)。
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