研究概要 |
1.個体レベルでのヘパラン硫酸-O-硫酸転移酵素(HS-O-ST)の機能解析:マウス、ショウジョウバエ、ゼブラフィシュで変異体の作製、解析を行った。1)ショウジョウバエHS6STの発現をdsRNAでノックダウンすると気管形成が異常になり胚は致死となった。この結果はHS6STがFGFのシグナル伝達に重要であることを示した。2)ゼブラフィシュHS6STの発現をモルフォリ(アンチセンスオリゴヌクレオチドの改良法)を受精卵に投与してノックダウンするとヒレの欠損、脳白質層の異常、筋細胞の分化異常などを示した。これらに関与するシグナル分子の解析からヘパラン硫酸の6-O-硫酸化はWntのシグナリングにも関与していることが示唆された。3)マウスHS6ST-1とHS6ST-2のノックアウトマウスを得ることができた。HS6ST-1ノックアウトマウスの大部分が出生時前後で致死であり、生まれてきても小さい。今後ショウジョウバエ、ゼブラフィシュの結果をふまえて解析を進めたい。4)マウスHS2ST, HS6ST-1,-2,-3の基質特異性について詳細に検討した。さらにこれらのリコンビナント酵素を用いて硫酸基の位置、硫酸化度の異なるオリゴ糖がin vitroで合成可能になったので今後種々のヘパリン結合性細胞増殖因子との結合構造の解析を計画している。 2.組織レベルでの本酵素の機能:ニワトリ胚肢芽におけるHS2ST, HS6ST-1,-2遺伝子の発現部位はそれぞれ特異的でヘパラン硫酸の構造に反映されていた。ニワトリ胚肢芽にこれら遺伝子を挿入したレトロウイルスを局所的に感染させる様々な方法を試したがさらに検討が必要である。 3.ヘパラン硫酸-O-硫酸転移酵素とヒト疾患との関連:ヒトHS6ST-2遺伝子を解析中にオルタナティブスプライシングフオーム(HS6ST-2S)が存在し、両者の発現組織が非常に異なること、基質特異性の違いを明らかにした。クラミジアのホスト細胞への感染にヘパラン硫酸が関与し、6-O-硫酸基が重要であることを明らかにした。
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