研究概要 |
1.出芽酵母の連続培養時にみられるエネルギー代謝のリズムと同調して熱耐性のリズムが振動することを見いだした。同調が起こる機構を調べた結果、リズムに同調した主なヒートショックタンパク質レベルの変動は無く、またHSEの制御下に置いたβ-ガラクトシダーゼレポーター遺伝子の発現も変化が見られなかった。一方トレハロースレベルが熱耐性のリズムと同調して変化していた。GTS1欠損株ではトレハロースレベルの振動が消失することから、熱耐性の振動はヒートッショクタンパク質ではなくトレ八口ースレベルの変動によって引き起こされるものと考えられた。(Uno, T et.al. Chrobiol. Int.) 2.エネルギー代謝振動の形成へのGTS1遺伝子の関与を検討した。酵母Two-Hybrid法により、GTS1遺伝子産物(Gts1p)はグリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)と細胞内でそのZnフィンガー領域と二量体形成領域とで結合することを見いだした。酵母には3種のGAPDH遺伝子があるが、TDH1mRNAエネルギー代謝リズムの変動に関与していた。このことからGts1pはTDH1遺伝子産物と相互作用しエネルギー代謝のリズムを生み出すことを示唆した。(Liu, W et.al. Eur. J. Biochem) 3.Gts1蛋白質レベルの変動はGTS1mRNAの変動とほぼ逆位相で振動する。Gts1蛋白質に存在するN-degronとUBAドメインの2つの領域に変異を加え、蛋白質レベルがどのように変化するかを調べた。その結果、いずれのmutantにおいても、Gts1蛋白質レベルの振動は消失し、連続培養におけるエネルギー代謝系のリズムは消失した。さらに、免疫沈降によりGts1蛋白質とユビキチンが結合すること、Two Hybrid法により互いに相互作用があることからGts1蛋白質がユビキチン・プロテアソーム系により分解を受け、これがエネルギー代謝系のリズム形成に関わっているものと考えられた。(Saitoh, T et.al. J. Biol. Chem.)
|