ホタテガイ外套膜よりクローニングしたミオシン頭部遺伝子は興味深いことに現在まで報告されてきた筋肉ミオシンとは異なる非筋タイプに属するミオシンであることが明らかになった。このミオシンの一次構造はN末端領域に存在するSH3ドメインに挿入配列をもつ特徴的構造を有していた。本研究では、このミオシンの機能、構造を明らかにすることを目的に尾部領域のクローニング、頭部領域の発現系の構築、軽鎖成分の同定を中心に研究を進めた。さらにホタテガイ外套膜に存在する新規ミオシンの探索も平行して行った。 (1)ホタテガイ非筋ミオシンの尾部領域のクローニングを行い、全長の遺伝子を単離した。その結果、興味深いことにこの非筋ミオシンは他のミオシンと比較すると300アミノ酸ほど短い尾部構造をもつことが明らかになった。しかしその2次構造は他のミオシンと同様coiled-coil構造を保持し、C末端領域にはヘリックス構造を持たない領域も見出された。このミオシンIIは現在まで報告されているミオシンIIのなかでもっとも分子量の小さいものであり、その生理的役割、酵素活性などさらに検討する必要がある。 (2)一方、ホタテガイ外套膜より新規ミオシンの探索を行った。その結果、778アミノ酸よりなるアンコンベンショナルミオシンのクローニングに成功した。このミオシンは、系統樹解析の結果現在まで報告されている16種類のどのミオシンにも分類されない新規ミオシンであることが明らかになった。その一次構造は、アクチン結合部位であるループ2領域に67アミノ酸が挿入されている非常に興味深い構造を有しており、今後このミオシンの発現、そして酵素学的性質の解明へと進めていく予定である。 (3)ホタテガイ非筋ミオシンの発現系の構築、そして軽鎖成分の同定に関する研究についても平行して進めてきたが現在までのところポジティブな結果を得ることができていない。引き続き検討を行っていく予定である。
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