研究概要 |
MAPキナーゼスーパーファミリーに属する新しいSer/ThrキナーゼMOKを同定し、マウス及びヒトの完全長cDNAをクローニングした。更に哺乳類細胞を用いた共免疫沈降実験によりMOKと結合する細胞内タンパク質を複数単離した。これらのMOK結合タンパク質はHSP90,HSC70/HSP70,Cdc37からなる分子シャペロン複合体であった。分子シャペロンの結合はMOKが細胞内で安定に存在することに必須であり、ゲルダナマイシン処理によりHSP90の機能を阻害するとMOKは速やかにプロテアソーム依存性に分解された。同様にMAPキナーゼスーパーファミリーと近縁な他の様々なキナーゼについてHSP90-Cdc37分子シャペロンと複合体を形成しているか調べた。用いたキナーゼはERK,p38,JNK/SAPK,MAK,MRK,HIPK1,HIPK2,Dyrk1A,Dyrk2である。このうちHSP90/Cdc37との複合体形成が認められたのはMAK及びMRKだけであった。従って、類似した活性ドメインを持つキナーゼでも分子シャペロンによってその安定性が制御されているものとされないものが含まれることが判った。 更に、生物個体でのMOKの機能を探る目的でMOK遺伝子欠損マウスの作成を開始した。マウスゲノムライブライリーからMOKの全長cDNAをプローブとしたスクリーニングによりMOKのゲノム断片をクローニングした。MOK遺伝子はヒトでは14q32に位置する全長約80kbpの領域に12のエクソンを含んで存在する。得られたゲノム断片はそのうちエクソン2-4を含む14kbpだった。同ゲノム断片の制限酵素サイトマッピングの後、TK/neoセレクションマーカーを含むターゲッティングベクターを構築した。現在相同遺伝子組み替えによる遺伝子変異のES細胞への導入を試みている。
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