研究概要 |
MAPKの一つであるp38は、ストレスや炎症性サイトカインによって活性化されアポトーシスに役割を果たす。しかし私はp38がアポトーシスばかりでなく造血系紳胞の増殖・発生・分化にも重要な役割を持つことを明らかにしてきた。その後、p38はα,β,γ,δのファミリーからなることが明らかになった。最近p38αノックアウト(KO)マウスが造血機能の異常により胎生致死となることが報告されたが、p38のファミリー間の機能の違い、及びそれらのターゲットや発生分化における分子レベルでの機能は全く不明のままである。そこで本研究ではp38αとp38βに焦点をあて、造血系の発生分化・細胞系列・機能特異性の決定メカニズムを解明することを目的とした。KOマウスで胎生致死となる個体では機能解析が困難であるが、KOマウスから作成した胚性幹細胞(ES細胞)のin vitro分化誘導系を用いれば機能解析が可能であり非常に有効な手段である。本年度は、まず、p38αKOマウスから新たにES細胞を作成してin vitro分化誘導系において、特に巨核球・血小板への成熟分化の過程を詳細に解析した。その結果、巨核球の分化成熟過程にみられる多倍体化や血小板放出(PPF形成)はほぼ正常であった。このことは、p38βがp38αの機能を代償している、かもしくは巨核球の分化成熟過程にはp38βが特異的に機能している可能性がある。そこで、さらにこのKOマウスES細胞由来巨核球及び正常マウスES細胞由来巨核球において、p38βを特異的にKOするためRNAi法を試みた。この手法は最近注目されている大変有効な方法であるが、哺乳動物系では一部の付着細胞について最近報告されたばかりで、ES細胞由来のしかも浮遊細胞である巨核球においては私も現時点では成功に至っておらず、来年度も引続き導入条件の確立を試みる。
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