研究概要 |
平成13年度には口腔領域に分布する三叉神経第3技の下顎神経について,30解剖体から有歯顎の6例(年齢26〜85歳)を選んでフォルマリン固定後クロム酸二次固定のニトロセルロース包埋の横断切片を作成し,研究代表者の開発した神経識別染色法のひとつのMasson-Goldner-Goto法で染めて無髄線維の形態計測学的評価をはじめて行なった.評価は顕微鏡に描画装置と特注NFKレンズ,拡大中間レンズ,画像解析装置,コンピュータ,計測ソフトを組み合わせて高倍率(3600倍)で計測を行なった.その結果,これまで存在が分からなかった無髄線維の存在を初めて証明した.また下顎神経は加齢とともに軸索横断面積が増加し(相関係数 0.8564),その軸索周長も増加する(相関係数 0.9120)ことがわかったが,無髄線維数の増減は認めなかった. 平成14年度は同一神経の同一切片で有髄神経線維の形態計測学的検討を追加した.有髄線維は加齢と軸索面積の間には顕著な負の相関を示すことを確認した(相関係数-0.9460).これは人体の他の末梢神経の軸索と同様の傾向である. ヒト下顎神経で,加齢とともに有髄神経線維の軸索はサイズが小さくなり,人体の他の末梢神経線維と同じ傾向を示すのに,無髄神経線維のみはその軸索サイズが加齢とともに増大する理由は現在のところ明らかになっていない.以上の結果は標本作成上の問題などではなく,明らかに加齢現象であることを初めて明らかにした.
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