研究課題/領域番号 |
13680845
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経化学・神経薬理学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野田 百美 九州大学, 薬学研究院, 助教授 (80127985)
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研究分担者 |
和田 圭司 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第4部, 部長(研究職) (70250222)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2002年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2001年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | ミクログリア / 記憶障害改善薬 / グルタミン酸受容体 / ブラジキニン受容体 / 脳傷害 / 5-HT5A受容体 / シグナル伝達系 / 精神疾患 / ニューロン / アストロサイト / 受容体 / 神経傷害 / パッチクランプ / PEPA / 腫瘍壊死因子 / 炎症性メディエーター / ブラジキニン / 一酸化窒素 |
研究概要 |
細胞生物学的に研究が遅れているミクログリアの機能解明に焦点を当て、以下の項目について解析を行った。 1)虚血後の記憶障害を改善する薬(PEPA:ピーパ)の作用機序について PEPAはミクログリアのAMPA型グルタミン酸受容体反応を増強し、最終的にグルタミン酸によるTNF-a(腫瘍壊死因子)の放出を減少させることがわかった。TNF-aは高濃度では細胞毒性を有すると考えられているため、このような機序が記憶改善作用に寄与していることが示唆された。 2)ミクログリアとアストロサイト・ニューロンとのネットワークについて 炎症性メデイエーターであるブラジキニンの受容体がミクログリアに発現していることを証明した。末梢の組織で報告されているように、通常はB2受容体サブタイプが発現しているものの、ブラジキニン処置後24時間で、炎症時に発現してくると言われているB1受容体サブタイプが新たに発現してくることを定量的RT-PCRで示した。あるいはミクログリア・アストロサイトからブラジキニンによってどのような各種サイトカインが放出されるかを検討することによって、発痛物質ブラジキニンを介したグリア細胞とニューロン、さらには脳血管壁との関連が新たに解明され、脳傷害の新たな治療薬開発につながる可能性がある。 当初、グリア・ニューロン連関の研究の一環として始めた以下の研究についても有意義な結果が得られた。 3)神経疾患発症に関与する受容体の機能解明 新規セロトニン受容体(5-HT5A受容体)はアストロサイトに主に発現し、その遺伝子多型と精神疾患(統合失調症)との関連が報告されたが、我々はまずグリア特有ではなく神経型受容体であることを発見した。またその機能解明のために正常型の5-HT5A受容体遺伝子ベクターを入手し、培養細胞に遺伝子導入して受容体・細胞内シグナル伝達系を解明した。その結果、すでに報告されている系(アデニル酸シクラーゼ系)のみならず、新たなシグナル伝達系として注目を浴びており、我々独自の方法で測定可能になったアデニル酸リボース系を抑制することが判明した。さらにクロスカップリングによってイノシトールリン酸系を亢進させることを解明した。このように一つの受容体が多様な細胞内シグナル伝達系にリンクしていること、カルシウム制御の上で相反するシグナル伝達系に同時にカップルしていることは、それだけセロトニンの作用が複雑であり、どの系が異常をきたすかによって精神疾患と結びつくのかという問題を解決する鍵となる。このようにセロトニンには多様なシグナリングが存在するということを世界で初めて報告した。
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