研究概要 |
ラット胎生期の呼吸性ニューロンの内因性バースト形成能について,以下のことが明らかになった.E17-20の胎児型C4吸息性活動パターンを示す標本において,約60%の吸息性ニューロンが電位依存性のバースト活動を示した.E19において,バーストニューロンの入力抵抗は非バーストニューロンのそれよりも有意に高かった.膜容量は,バーストニューロンで低い傾向が見られた.バーストニューロンは低Ca2+/高Mg2+液潅流下においても電位依存性バースト活動を維持し,内因性バースト形成能を持つと結論された. 光学的測定法を用いて,膜電位感受性色素で染色した胎生期腹側延髄における呼吸性ニューロンネットワークの活動を解析した.E21,20では,呼吸性神経活動は,吻側腹外側延髄(RVLM)の限定された領域(傍顔面呼吸ニューロングループ,pFRG)から吸息活動に先行して始まり,主に尾側方向に伝播した.続いて吸息相においては,活動のピークは尾側腹外側延髄(CVLM)に出現し,また吻側延髄では,顔面神経核領域(特に外側及び内側)に出現した.これらの活動パターンは基本的に新生児ラットの場合と同様であった.一方,E17標本のすべて及びE18標本のほとんどでは,呼吸性神経活動はまずCVLM領域に,ほぼ吸息性活動の開始に一致して出現し,主に吻側に向かって伝播した.これに続いて,顔面神経核領域全体に強い活動が出現し,C4吸息性活動の終了後も1-3秒間持続した.E19標本の半数では,呼吸性神経活動はpFRGから開始した(新生児型)が,他ではCVLMから開始した(胎児型).ただし,E19標本で新生児型の時空間パターンを示した標本でも,C4吸息性活動は胎児型の短いバーストパターンを示した.したがって,吸息性活動が新生児型へと発達する前に,リズム形成回路およびネットワーク全体の活動の時空間パターンのほうがまず新生児型へと発達することが示唆された.
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