研究概要 |
複数の動作で構成される一連の行動を計画するとき、脳は多様な複数動作の組み合わせをカテゴリー化し、その概念を利用することによって行動のプログラミングを行っている可能性がある。今回の研究ではそのカテゴリー化と概念形成が前頭前野で行われているという仮説をたて、それを検証する一連の実験研究を行った。 具体的には、複数の動作(A, B, C, D・・・・)の中から任意の動作を選んでそれをABAB(交互パターン)、AABB(ペアーパターン)あるいはAAAA(モノパターン)の三種類のパターンで記憶依存性に遂行している時の前頭前野の細胞活動を調べる。行っている動作の種類と無関係に、ある特定のパターンの順序運動に依存した活動が前頭前野にどのような特徴をもって存在するか、すなわちあるパターンに選択的に活動する細胞があるか否かを検討する。 3種類に大別される複数動作パターン遂行時の前頭前野の細胞活動をしらべた。その結果、複数動作遂行に先行する待機時に多くの細胞が活動の上昇を示した。待機期間中に活動を示す細胞のみを対象として分析した。その結果、大多数の細胞は実行する運動そのものではなく、これから遂行する複数の動作がどんなパターンかということに依存する活動を示した。パターンはモノパターン、交互パターン及びペアーパターンに大別された。77個の細胞が運動の待機期間中に活動の上昇を示し、上述した3種類のうちいずれかに属するパターンを遂行するのに先行して活動を示す細胞が53個記録された。モノパターンに関係した細胞は11個、交互パターンは23個、ペアーパターンは19個であった。 大部分の細胞は弓状溝の近傍で主溝の上方から記録された。しかし、弓状溝後端に位置する前頭眼野からは記録されなかった。以上の結果から複数動作のパターンによるカテゴリー化に前頭前野が深く関与していることが明らかになった。
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