研究概要 |
脳活動を支えるエネルギーは専らグルコースに依存しているが、脳活動とグルコース供給との関係には不明の点が極めて多い。申請者らは、グルコースの単一哺乳動物細胞内への取り込みを、生細胞で初めてリアルタイムに可視化し、その定量的関係を明らかにした(Yamada, et al.,J Biol Chem,2000)。そこで本研究においては新規蛍光標識2-デオキシグルコース(2-NBDG)をトレーサーとして用いることで、脳神経細胞におけるグルコース取り込みの可視化を試みた。その結果、マウス視床下部満腹中枢(VMH)、大脳基底核黒質網様部(SNr)、大脳皮質視覚野から急性単離した神経細胞は2-NBDGを取り込み蛍光強度の有意な増加を示した。これにより生きた単一神経細胞へのグルコース取り込みが、始めて可視化された。2-NBDGの取り込みの程度には細胞により大きな違いがあったが、特に脳内で最も高頻度の自発発火活動を示しエネルギー基質の減少に対して極めて鋭敏に応答するSNr細胞に関しては(Yamada K, et al, Science,2001;Yamada and Inagaki, News Physiol. Sci.2002)、2-NBDG取り込みがVMH神経細胞と比較して有意に大きい傾向は認められなかった。発火活動の違いが直接的にグルコース取り込みと相関するかどうかはさらに今後研究すべき課題である。また脳スライスを用いて電気刺激あるいは薬理的手法により皮質を興奮させ2-NBDG取り込みのパターンを観察したところ、特徴的な蛍光強度の増加が認められ、神経活動に依存したグルコース取り込みの増大を反映する可能性が示唆された。2-NBDG取り込みの活動依存性は、in vivoでラットのヒゲを刺激した除に、バレル野でも観察されたが、今後更に細胞レベルでの詳細な検討が必要である。
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