研究概要 |
大脳前庭野の存在については多くの議論が成されてきて,複数存在することが知られているが,未解決の問題が多い。そこで,本研究では,まず,サルにおける大脳前庭野のすべてを見い出すことを目的とした。 1.サルの中耳は深部にあるためアプローチが難しく,刺激電極を植えることがこれまで困難といわれてきたが,新たなventral approachで前庭神経に刺激電極を植える方法を用いた。 2.中耳内の内耳窓近傍に銀ボール電極を植え、前庭神経の電気刺激を行い、大脳皮質の広範な部位において表面電位を記録し、反応を示す2v野と6paで,層別電場電位解析を行った。その結果,insular cortexと6paに強い入力が同定された。 3.これまで層別電場電位の解析によって視床皮質投射には浅層性のものと深層性のものが存在し、その電場電位の層状プロフィールは視床皮質投射細胞の神経終末の分布と一致することが、ネコにおいて明らかにされている。この結果をふまえ、insular cortex及び6pa野で,前庭神経を電気刺激した際の、層別電場電位の解析から、前庭性の視床皮質投射は浅層性投射と深層性投射の混合した投射様式であることが判明した。 4.中耳内に刺激電極を植えて刺激しているため,誘発された反応が聴神経,顔面神経への電流滑走によるものでないことを確認するため,これらの神経を内耳道内で切断と中枢上行性MLF切断により,上記の得られた反応が、真に前庭神経由来であることを確定した。 5.以上の結果を解析し,現在論文をJournal of Neuroscienceに投稿中である。
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