研究概要 |
ラットおよびマウス延髄スライスを作成し、孤束核ニューロンからホールセル・パッチクランプ法で微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)を記録した。 平成13年度は、下記の事実を証明した。(1)ATPおよびα,β-methyleneATP(αβmeATP)がmEPSC頻度を約400%まで有意に増加、(2)この効果は10-40μMのPPADS、1.01μMのTNP-ATPによって消失、(3)この効果は、細胞外Ca除去によって消失しCd^<2+>存在下に残存、および、(4)αβmeATPは、孤束刺激誘発EPSCのfailure rateを増大しない。 平成14年度は、さらに以下の知見を得た。(1)αβmeATP投与によって80%のニューロンにおいて自発性のものよりも高振幅のmEPSC(large mini)が発生した、(2)cyclopiazonic acid,ryanodine,2APBはこのlarge miniの発現に影響を及ぼさなかった、(3)これらのlarge miniは、Cd^<2+>存在下でも発生し、Cd^<2+>存在下TTX非存在下にシナプス後ニューロンに活動電位を発生させた、(4)αβmeATPは孤束核ニューロンの自発ならびに微小抑制性シナプス後電流には影響を及ぼさなかった、さらに、マウスにおいて、(5)αβmeATPによるmEPSC頻度増加は、GAD67陰性細胞のすべてで生じ、GAD67陽性細胞では50%でしか生じなかった。 以上から、孤束核興奮性および一部の抑制性小型ニューロンに投射する興奮性ニューロン線維の終末にはP2X受容体(P2X_<4/6>、P2X_<1/5>型もしくは未同定のヘテロ受容体)が発現し、その活性化はP2X受容体からの直接的Ca流入によって、活動電位および電位依存性Caチャネル活性化に依存しないグルタミン酸放出を誘発し、シナプス伝達を誘発する事実が証明された。
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