研究概要 |
生後12-20日齢ラット脳スライスを用いて、線条体のアセチルコリン性介在ニューロンへのGABA性シナプス伝達に対するドーパミンの修飾機構の解析を行なった。アセチルコリン性ニューロンから記録されるGABA性抑制性シナプス後電流は、外液中に投与したドーパミンにより濃度依存的に抑制された。また、ドーパミン受容体アゴニストおよびアンタゴニストを用いた解析、自発性抑制性微少シナプス後電流の解析、さらに、N型およびP/Q型カルシウムチャネルブロッカーを用いた解析を行い、シナプス前D_2タイプ受容体活性化により、N型カルシウムチャネルを通るシナプス前終末へのカルシウム流入が阻害され、GABA遊離が抑制される、という結果を得た。これは、伝達物質遊離を制御するシナプス前ドーパミン受容体と特定のカルシウムチャネルサブタイプとの共役を同定した最初の仕事である(Momiyama & Koga, Journal of Physiology, 523:479-492, 2001)。最近の報告によれば、いくつかの中枢シナプスでは、生後2-3週までに、N型カルシウムチャネルの関与が消失することが明らかになっている(Iwasaki et al., 2000)。この線条体シナプス伝達において生後発達変化を明らかにするために、生後21-60日のラット脳スライスを用いた解析を行なった。N型チャネルの関与は生後発達とともに減少し、それに伴ってシナプス前D_2型受容体を介する抑制も減弱したが、D_2タイプ受容体とN型チャネルとの共役は保たれたままであった(Momiyama, Journal of Physiology, 546:483-490, 2003)。これは中枢シナプス伝達を制御するカルシウムチャネルの生後発達変化を、それを修飾するGタンパク共役型受容体の生後発達と関連づけて解析した最初の仕事である。
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