研究概要 |
(1)臨床において行われている各種膝前十字靭帯(ACL)再建手技で再建した大腿骨-移植材料-脛骨(FGT)複合体について繰り返し引張負荷を与えたときに発生する大腿骨-移植腱-脛骨複合体の塑性変化に与える初期張力の効果を明らかにすることを目的とした。 (2)ブタの膝関節を代用材料とするACL再建モデルを用い,3つの術式でACL再建術を行った3群(各15膝)に分けた。A群では膝蓋腱をinterference screwで固定する術式、B群では多重束屈筋腱を腱軟部組織用interference screw (RCI)にて固定する術式、C群では2重折り屈筋腱の大腿骨側をEndobutton、脛骨側をserew postで固定する術式を行った。 (3)作成した大腿骨-再建代用材料-脛骨複合体を閉ループ式引張試験機に接続された角度調節機能付き骨把持器に装着し、移植腱初期張力として各5複合体に20N,80N,140Nのいずれかの引張荷重を2分間加えた後,0.21Hzで2mmの繰り返し伸びを5000回加えた。繰り返し負荷試験中の張力と変位を記録し、張力-変位曲線を求め、各サイクルにおけるピーク張力を算出した。繰り返し負荷後,大腿骨-再建代用材料-脛骨複合体の破断試験を行ない、最大破断荷重と線形剛性値および初期線形剛性値を求めた。 (4)繰り返し負荷試験では全ての群においてピーク張力は100回で急速に減少し、それ以後は緩除に低下した。5000回負荷時のピーク張力は、全群ともに初期張力20Nと比較し初期張力80N,140Nは有意に増加した。A群のピーク張力はB、C群より有意に高値を示したが、B群とC群には有意な差は示さなかった。 (5)繰り返し負荷後の破断試験における初期線形剛性値は各群ともに初期張力80Nが20Nより有意に増加していた。A群とC群は初期張力140Nが80Nより有意に増加していた。A群の初期線形剛性値はB、C群より有意に高値を示した。線形剛性値および破壊荷重は全ての群で初期張力増加の有意な効果を認めなかった。 (6)以上の結果は20Nから140Nまでの初期張力の増加は,5000回の伸張負荷後におけるFGT複合体の破断特性を低下させないことが明らかとなった。したがって,本研究における3術式に関する限り,少なくとも破断特性という見地からは20Nから140Nまでの初期張力を選択できうるものと考えられたことを明らかにした。
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