研究分担者 |
村上 弦 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30157747)
岡村 健司 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80264513)
宮本 重範 札幌医科大学, 保健医療学部, 教授 (20166200)
山越 憲一 金沢大学, 工学部, 教授 (40014310)
石井 清一 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20001000)
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研究概要 |
1.肩腱板の修復・再建に適した吸収性生体材料の製作と生食内培養条件、家兎筋膜上移植条件下での加水分解、および生体内適合性の観察 ポリ乳酸重合体を素材として,太さ20μの細繊維を製作し、その繊維を加工して厚さ2.5mmのフェルトを製作した。(PLLAフェルト:鈴鹿医療科学大学,筏義人より供与).素材の引張り計測により、PLLAフェルトが肩腱板の再建に十分な抗張力を持つことを確認した。6週、12週の培養あるいは家兎筋膜上移植ではPLLAフェルトの抗張力は減弱しなかった.筋膜上に6週間移植されたPLLAフェルトの人工繊維間隙に線維芽細胞と毛細血管が侵入し,良好な肉芽組織を形成した.12週ではPLLAフェルト繊維の融解像を認めなかった.以上より,PLLAフェルトの短期での組織適合性と抗張力が確認され,肩腱板の再建手術に応用可能であると判定された. 2.PLLAフェルトを用いた肩腱板の再建動物モデルと再建結果の観察 ビーグル犬の棘下筋腱に作製した腱板の欠損部をPLLAフェルトで連結し,腱板の再建術を行った。その結果,再建された棘下筋の引張り特性は術後8週で155N(正常腱の約20%),16週で336N(正常腱の約40%)となり、有意に増加した.引張り剛性も同様に増加した。組織学的にはPLLAフェルト繊維周辺を瘢痕組織が取り囲み、異物反応が少なく良好な組織適合性を認めた。しかし、骨との結合部の線維組織の発育が遅れていた。PLLAフェルト繊維素材の劣化は術後32週で初めて観察され,52週で進行した. 3.以上の結果より、PLLAフェルトは肩腱板の再建術に適した吸収性生体材料であることが明かとなった.PLLAフェルトの吸収性素材としての短所は吸収速度が遅いことであり,今後吸収速度を早めたポリ乳酸・カプロラクトン共重合体による抗張力のあるフェルト素材を開発する必要がある.
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