研究概要 |
本研究では,体内埋込型人工心臓を装着し自宅で生活する患者を対象に人工心臓異常早期診断技術の確立を目標に,移動体通信技術と人工心臓発生音信号を測定する電子聴診システムの開発に関する研究を行った.体表上で人工心臓発生音信号を測定する電子聴診システム開発し,波動型人工心臓埋込み山羊を用い評価したところ,人工心臓発生音を周波数解析することで人工心臓を構成する各機械部品要素ごとにその劣化の状態を把握することができることが分かった.その一方,体表上で人工心臓発生音を取得する際に聴診部に外来雑音が混入し異常診断の自動化の妨げとなることが分かった.そこで体表上で測定する人工心臓発生音信号から外来雑音を除去する方法ととして1)生体の音伝搬特性を元にした最適ローパスフィルタによる周囲雑音除去法,2)Adaptive noise cancellerによる周囲雑音除去法を考案した.生体の音伝搬特性を元にした外来雑音抑制法は高い周波数成分の外来雑音を効率的に除去でき,またadaptive noise cancellerによる方法は特に人工心臓発生音と周波数帯域が重なる領域で効率的に外来周囲雑音を除去することができた.この外来雑音抑制フィルタを内蔵した改良型電子聴診システムを波動型人工心臓埋込山羊を用いて評価したところ,外来雑音が効率的に除去されメンブレンの破損による人工心臓発生音の変化を測定することができ,人工心臓早期異常診断の自動化に有効な手段であることが分かった. さらにPHSを用いた人工心臓発生音信号の遠隔伝送を試みたところ人工心臓発生音信号のサンプリング速度22kHzとすることで,人工心臓発生音信号測定時間の2倍以内に情報を送ることができることが分かった. 以上の結果より,本研究で開発した電子聴診システムとadaptive noise cancellerによる外来雑音抑制,およびPHSによる人工心臓発生音遠隔伝送技術は,人工心臓早期異常診断システム開発の基礎技術開発を達成したものと考えられる.
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