研究課題/領域番号 |
13710012
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
倫理学
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研究機関 | 駿河台大学 (2002) 東京大学 (2001) |
研究代表者 |
岡田 安芸子 (藤村 安芸子) 駿河台大学, 現代文化学部, 講師 (20323561)
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研究期間 (年度) |
2001 – 2002
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研究課題ステータス |
完了 (2002年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2001年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 故郷 / 農村 / 風景 / 風土 / 超越 / 共同体 / 歴史 / 他者 |
研究概要 |
本研究は、和辻哲郎と柳田国男の景観論を倫理思想史的に捉え、私たちをとり囲む風景が、共同体や道徳意識といった倫理思想の形成にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。 研究最終年度は、昨年度の研究の成果をふまえた上で、研究のとりまとめを行った。 (1)それぞれの故郷について調査した昨年度に引き続き、両者が訪れた土地について調査した。その結果、以下のことが判明した。柳田国男は、日本各地を訪れ、それぞれの地域の伝説を収集する活動を行ったため、各地の景観と歴史の関係について考察し、それを日本の島国という特徴と結びつけながら理解しようとした。それに対して、和辻哲郎は、農村から都会へ、さらに西洋へと活動を広げたため、各国の景観と人々との特殊な結びつきに対する関心が強まり、それぞれを比較しながら理解しようとした。 (2)一方で自叙伝の読解をさらに深めることにより、柳田は、歴史の流れの中に自らを位置づけようとするのに対して、和辻は、眼前の他者との関係の中に自らを位置づけようとすることが判明した。両者のこの違いは、景観の意味づけに大きな相違をもたらした。すなわち、柳田は、風景の向こうにそれを育んだ人々の歴史を見出そうとしたのに対し、和辻は、風土を自分と他者をつなぐものとして捉えることとなった。 (3)以上の研究をふまえると、柳田国男も和辻哲郎も、山に囲まれた出身地の景観が、共同体の原イメージとして存在しているが、それぞれ関心が歴史と空間に分かれたため、景観の意味づけも異なることになったと考えられる。両者はそれぞれの形で、風景に囲まれた生活の中に、人と人のつながりを実感できる具体的な現場を見出しており、そうした営みは、現在のように風景が急速に変化していく時代において、改めて風景について考え直す視点を与えてくれるであろう。
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