研究概要 |
本研究の目的は,自伝想起課題を用いた自己関連付け効果の生起メカニズムを明らかにすることであり,この目的を達するためにH14年度は2つの実験を行った. 一般的な自伝想起課題には,手がかり刺激から連想される行動を生成する処理と,生成された行動が各被験者の保持する自伝的記憶に適合するかを検索・再認する処理が包含されている.実験4では生成段階の処理として,行為生成(語から行為を連想させる)課題を設定し,自伝想起課題や意味課題の記憶成績と比較検討した.その結果,行為生成課題の再生成績は,自伝想起課題より低く,意味課題と同程度であった.この結果は,自伝想起課題を用いた自己関連付け効果は,行為生成以降の処理,すなわち,生成された行為を検索・再認する段階の処理によって生じる符号化に依存していることを示しており,平成13年度に行った実験1〜3の結果と一致するものである. さらに,実験5では事象関連電位(ERP)を指標とし,自伝想起課題と意味課題の活性化部位を比較したところ,Fz, Cz, Pzなど全体的に自伝想起課題より意味課題のほうが,振幅が大きかった.振幅の大きさがある測定部位の活動量の指標であるとするならば,自己関連付け効果の存在を考慮すると,自伝想起課題のほうが意味課題よりも振幅が大きいことが予想される.予測に反する結果が得られた原因としては,2秒以内に自伝的記憶の有無を判断することが求められたため,自伝想起における生成や再認がうまくできず,自伝的記憶の有無をメタ水準で判断していたことが指摘される.この問題は,ブロックデザインのfMRIを適用することによって解消されると考えられる. 平成13年度に行った実験3は「心理学研究」に投稿し,審査を受けているところである.現在,実験1,2,4をまとめて投稿する準備を進めている.また,日本心理学会などの内外の多くの学会で成果の発表を行った.
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