研究概要 |
本研究は,メンタルヘルス獲得を目的とする音楽聴取の効果に対し,(a)メタ動機づけ状態すなわち高覚醒状態と低覚醒状態のどちらを欲しているか,(b)パーソナリティ特性すなわち一般的に性格と呼ばれているもの,の2つが与える影響を扱った。 平成13年度は,日常の音楽聴取行動についての学生による自由記述を分類し,音楽聴取への希求が状況のどのような側面によって生じるかを探索した。さらにTelic-Paratelic状態測定自己報告尺度の日本語化を試みた。また,生理指標と心理指標との対応関係から音楽聴取時の状態を捉える試みに着手した。平成14年度は,状況により生じる音楽聴取への希求が楽曲の持つ覚醒的性格や聴取者のパーソナリティ特性によりどのように異なるかを調べた。また,音楽聴取中の時系列的な変化における生理指標と心理指標との同期的な対応関係を分析し検討した。 得られた成果の主なものをあげる。1.音楽聴取行動場面とパーソナリティ特性との関連が示唆された。2.外向者は音楽を自分の覚醒水準を操作するために用いるが内向者はそのような働きを音楽に求めないことが示された。3.Telic-Paratelic状態を測定する自己報告尺度(Cookら,1993)の日本語化を試み、音楽聴取前後のメタ動機づけ状態の変化を測定した。4.自律神経系の覚醒状態はメタ動機づけ状態と関わることが示唆された。しかしそれは感じられる覚醒と1元的に対応するものではないと考えられる。5.音楽聴取中の気分変化と交感神経緊張との対応関係を同期的に観察した結果、対応関係にいくつかのパターンが見出された。
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