研究概要 |
本研究においては,関東甲信越地区の公立小中学校および公立私立高等学校を対象として,心理的ストレス,学校不適応,および攻撃行動に関する実態調査を実施した.この調査結果と,平成13年度までに行った攻撃行動の変容を目指したストレスマネジメントプログラムの持続性効果の検討結果を踏まえて,ストレスマネジメントプログラムの修正を行った.その後,社会的スキル訓練(児童生徒個人の行動的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,セルフ・エフィカシーの向上(児童生徒個人の認知的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,および,ソーシャルサポートの充実(児童生徒を取り巻く環境の調整)を中心とした介入を実施する小中学校をそれぞれ選定し,児童生徒の攻撃行動の変容に及ぼすストレスマネジメント実施の効果を検討した.なお,効果測定においては,攻撃性尺度やストレス反応尺度を中心とする質問紙調査(自己評定),教師による他者評定,友人による他者評定,第3者による行動評定などを多角的に用いた.その結果,ソーシャルサポートの充実による介入は小学生を除き,ほとんど効果がないことが示された.一方,社会的スキル訓練,およびセルフ・エフィカシーの向上による介入は,全般的に児童生徒の攻撃行動を変容する可能性があることが明らかにされた.さらに,児童生徒個人を対象とした介入(ケース研究)においては,小中学生ともに社会的スキル訓練の顕著な介入効果が得られた.しかしながら,セルフ・エフィカシーの向上やソーシャルサポートの充実には介入効果はほとんど得られなかった.以上のことから,児童生徒の攻撃行動の変容には社会的スキルの獲得が大きな効果があること,集団介入と個別介入では,介入を行う要因によってプログラムの効果が異なる可能性があることが示唆された.
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