研究概要 |
本年度は小学校での学級崩壊現象が起きる諸要因、学校でのストレス対処方略ならびに子どもの学校適応についてのアセスメント法を探索する調査研究を行った。昨年の調査において教員イメージと中学生の攻撃性との関連が示唆されたため(田中,2002)、予備調査として教員と子どもとの関係性と学校画との関連を、小学生203名について検討した。次に学校適応、教室での気分、教員イメージを問う項目で構成された質問紙調査と学校画を、小・中学生1350名に実施。同被調査者のうち82名の小学生に、学校や家庭でストレスが生じた場合、学校でどのようなストレス対処を行うのかを尋ねる個別インタビューを行った。 その結果得られた知見は以下の通りである。(1)小学校低学年では、描画に描かれた友達の数と教員への心理的近接性とは負の相関が有った。つまり学校画で友達の数を少なく描く子ほど、教員と親密になりたい願望が高いことが推測された。(2)小学校1年生で描かれた自己像と教員像の距離の平均値は133ミリであるのに、2年生では42.5ミリ、と急激に近くなっていた。学校画に描かれた自己像と教員像との距離が、学校や教員に慣れ親しんでいるかの指標になる可能性、小学校1年生から2年生の時期が、教員に対する信頼感の育成に重要であることが推察された。(3)友達とのトラブルが生じた時の対処について、小学校3年生は「解らない」「先生に言う」という回答が多かったが、6年生は「先生に言う」のは減少していた。中学年と高学年では、ストレス対処に教員を関与させる程度が異なる可能性がある。(4)自己像や友達像を学校画で小さく描く子ほど、友達と親密になりたい願望が高いことが推測され、学校で友達をいじめたことがある子ほど、学校画で先生像を大きく描く傾向が見られた。以上から、学級崩壊の支援・対策には、特に小学校1〜3年生における教員への信頼感の育成が重要であると考えられた。
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