研究概要 |
本年度の研究においては、現代アメリカにおける教育政策・少年司法政策・福祉政策の連携に関して,諸事例の分析に着手した上で,その基本的な政策目標,組織構造,連携実態,効果と課題等の視点から研究のまとめを行うことが主な目的であり,以下のように遂行された。 まず,理論的な側面から,上述の政策連携に関する基本的定義,歴史的社会的背景,政策の構成要素等について整理を行った。その結果,これまでの教育政策動向とは異なる新たな特質として,学業成績中心の学校観において周辺化された「ケア」の発想を回復させる点,個人的家族的範囲を超えた地域社会全体の文化資本の改善・整備が見られる点などを明らかにすることができた。 次にいくつかの事例の検討を通じて,政策連携の特質を政策過程および政策内容の視角からそれぞれ考察した。政策過程では,アクターが多様化することによって学校および児童生徒のニーズの多様性に照応した柔軟な対応が生み出されていること等を特質として指摘できる。また,政策内容では,児童生徒の社会的自立を地域社会の経済的・文化的な改善と同調させつつ実現する志向性があること等が重要な特質として指摘できた。他方,政策連携に関する課題も多く残されており,専門家間の齟齬や財源配分方式の不安定性に加えて,学校側が一方的に地域資源に依存するのみという問題もみられた。 以上の諸点を中心として,所属学会における研究成果発表(日本教育行政学会,関西教育行政学会)および学術論文の作成を行った。
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