研究概要 |
本研究は,「学校の自律的な管理運営を保律する制度とは如何なるものか」という問題意識の下,ロシア連邦における学校の管理運営体制に関する現行法制を教育改革の動向や教育行政制度の全体像を踏まえて総合的に分析するその構造と実態を明らかにすることを目的としている。 本研究では,ロシア連邦の管理運営体制が,学校の自律性の確保に向けた3つの段階を経て成立したことが明らかとなった。まず,ペレストロイカ政策期の学校では,国家・行政機関からの自律性を確保することが意図された。これは,学校裁量権の拡大に伴い,学校が自らの意思を決定できるようにするための措置であり,それぞれ同数の教職員,生徒及び保護者・地域住民から構成される学校代表者会議や学校会議が,学校の管理運営に責任をもつ体制が形づくられた。つまり,学校の管理運営は,国家・行政機関ではなく,保護者・地域住民など「社会」の代表者が参加して行われることが基本方針とされたと指摘できる。次に,ソ連邦崩壊から1996年かけては,こうしたマルクス主義的なイデオロギーからの自律性を獲得することが目指された。具体的には,学校裁量権の拡大が再確認されると同時に,学校から共産党粗織を排除する措置が講じられた。これにより,学校の管理運営は,学校自身の手に委ねられることとなり。西欧的な民主主義社会の形成という新たな国家理念の中で,学校ごとに特色ある教育を提供するための条件整備が図られた。さらに,1996年以降には。学校会議が,学校の自主管理の一形態として。保護者会話,学校総会,教職員会議などと同列に例示されるに留まるなど,学校の管理運営体制の自由化が図られた。その結果,今日のロシア連邦では,学校の管理運営における「責任の明確化」と「効率化」が,実質的に校長の権限と責任の拡大を方策として進められ,校長の強力なリーダーシップの発揮を通じて,個人や社会の多様なニーズに対応した学校教育を実現していくことが期待されている。
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