本研究では、障害理解を主題とする「総合的な学習の時間」の授業を通級指導教室と通常の学級との連携によって行い、多学年にわたって重層的に展開される授業計画の構築を目指した。そのため、障害理解に関する指導内容や、授業展開における通級指導教室担当者と通常の学級の担任との連携のあり方について明らかにすることを目的とした。2年間の研究で以下のことが明らかになった。 1.短時間の障害疑似体験だけでは、児童たちは「障害のある人はかわいそうな人」という印象のみを持ってしまう可能性があった。その解決には、疑似体験の繰り返しによって、代行機能や介助器具等を知る経験、障害のある人に会って話を聞く経験が必要であった。このことから、障害理解授業では、十分に時間をかけた疑似体験と、障害のある人と出会って話を聞く経験の両方を取り入れることが必須であると考えられた。 2.授業の展開において、通級指導教室担当者が専門的知識の提供と体験内容の具体化等を行い、通常の学級の担任が学級の特性に応じた授業の進行と個々の児童の学習支援等を行う、という連携を行った。この連携で授業展開がスムースなものになった。両者の連携は通常の学級で障害理解授業を展開する上で有効であると考えられた。 3.児童たちの取り組みの様子や感想文から、第3学年で視覚障害体験、第4学年で聴覚・言語障害体験、第5学年で車いす体験、第6学年で高齢者体験という順序で授業を構成すると、児童は学習のねらいを理解しやすく、障害理解の深められるのではないかと考えられた。 今後の課題は、学習内容の精選と児童の変容を評価する枠組みの作成である。
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