研究概要 |
時期により異なるが、明治末期から大正初期にかけての作文規範書においては、おおむね以下のような傾向がみられた。 1,いかに文章を書くかという実用的要請に応じるのみならず、さらに進んで「常識」や「趣味」の修養を書物の目的として,序文などに掲げ、「国民」が身に付けることがふさわしい知識や教養がどのようなものかを、積極的に提示している。 2,これらの書物で提示される「常識」および「趣味」は、具体的にはどのようなものか。 (1)国民国家成立のため、政治的・文化的に功績のある人物や事件が、積極的にとりあげられている。たとえば、「伝記」や「弔祭文」ジャンルでは、明治天皇のほか、日露戦争時の軍神神話で有名な佐久間艇長、伊藤博文、乃木希典など。「儀式文」のジャンルでは、日露戦争当時の、軍の出征や勢旋をたたえる文章。 (2)「国民の抱負」「人臣の道」など国民としでの自覚を促す主題が多くとりあげられている。 3,女性が書く文章については、「女用文」として別項目が立てられている場合が多い。取り上げられているジャンルと主題は以下のようなものが多い。 (1)ジャンルでは、日記、手紙など、日常生活に密着したもの。 (2)主題では、「女子のつとめ」「偉人の母」など、国家に有用な女性となることを促すもの。
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