第一に、平成14年度の研究遂行に必要な一次資料(立法資料=連邦議会の審議記録、各種委員会の報告書、民間団体による意見書など、裁判資料=主として連邦裁判所での判決文、当事者の意見書など)および二次資料(一次資料を分析する論文・書籍等)の調査・収集・整理を行い、前年度に行った資料調査・収集・分析を補完した。とくに、アメリカ連邦最高裁で2001〜2002年開廷期および2002〜2003年開廷期に下された最新判決と、それらに関する評釈・分析を補完した。第二に、日本での人権救済立法の参考とするため、アメリカの人権救済立法(連、邦および各州のCivil Rights Acts)の研究を行った。とくに、非営利法人による権利侵害行為に対する連邦1983条訴訟(1860年代に制定され1960年代にその役割を拡大した人権救済法)とステイト・アクション法理の関係に着目し、関連するアメリカ連邦最高裁判決の分析をおこない公表した(「ステイト・アクションの法理:州規模の非営利スポーツ協会の行為はステイト・アクションとなるか」ジュリスト1239号(2003年)所収、「非営利法人の権利侵害行為とステイト・アクション法理」国際公共政策研究7巻1号(2003年)所収)。アメリカでは、公的色彩の強い民間非営利法人による権利侵害行為をステイト・アクションとみなし、憲法上の規律を及ぼすとともに、人権救済法による救済の対象としている。この理論はわが国でも参考になり、これを手がかりに、日本での人権救済法の立法化の基礎となる立法政策・公共政策のあり方を分析・検討することが可能である。
|